数年前から「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」という言葉をよく目にするようになりました。関連書籍もベストセラーになり、「聞いたことがない」という人は少数派かもしれません。
一方で、「実際にFIREを達成した50代の知り合いがいるか?」と聞かれると、多くの人は首をかしげるはずです。とくに50代から一気に“完全リタイア”を前倒しするFIREは、残りの運用期間や教育費・住宅ローンを考えると、現実的にはかなりハードルが高いのも事実です。
それでも私は、「50代からのFIRE」は決して夢物語ではないと考えています。ポイントはただ1つ。
完全引退にこだわらず、「年金」「退職金」「副業収入」を組み合わせた“50代FIRE(サイドFIRE/スローFIRE)として設計すること。
年金や退職金の見込みがかなり具体的に見えてくる50代は、20〜30代よりもむしろ設計の精度を上げやすい世代です。
この記事では、50代でFIRE(サイドFIRE含む)を目指すときに「いくら必要か」を、自分自身の計画をベースに具体的な数字で整理していきます。
- 自分は「50代FIREにいくら必要か」を試算するための考え方
- 50代FIREならではの強みである「年金・退職金の見込み額の取り方」
- 50歳の私のリアルなFIREシミュレーション
- 資産3,000万円/5,000万円/6,000万円/1億円それぞれの「戦い方」
- 50代からFIREを目指す人が押さえておきたいリスクと注意点(インフレ・医療費・再就職など)
- 「金融資産1億円なくてもFIREは可能か?」という問いへの現実的な考え方

おかだ しょうざぶろう(50)
投資信条は「長期投資」「積立投資」「確信を得るまで分析する」
ファイナンシャルプランナーの勉強を通じて、資産形成の本質を探求中
大企業で20年以上、ビジネス開発や人材事業に携わり、多くの上場企業の経営者ともビジネスの場で対峙
人生の夢(世界一周・海外移住など)を実現するために、「投資資産のみで1億円」を長期目標に設計している50代会社員
50代でもFIREは現実的なのか?|「50代FIRE」の前提整理

結論から言うと、50代は“遅い”のではなく、設計の精度を上げやすい年代だと感じます。
40代後半からファイナンシャルプランニングを学びはじめ、ライフプランニング/資金計画を具体的に考えるようになりました。20〜30代の頃は、正直ライフプランニングなど意識することもありませんでした。だからこそ、私にとっては「今が」FIREを考えるのに最適な時期だと思っています。年金や退職金、教育費の終わり方など、見通せる材料が増えた今なら、数字に落とし込みやすく、現実的な計画に変えやすい——そう実感しています。
見通せる材料が増えると、設計は一気に現実味を帯びます。私の場合は次の3つが大きかったです。
- 年金の見込み額が具体的に拾えるようになったこと
「夫婦で年◯◯万円」という“自分の数字”を置けるだけで、65歳以降の必要元本のブレが小さくなります。 - 退職金の制度と受け取り方が把握できたこと
一時金か年金形式か、税金はどれくらい差し引かれるのか。ここが見えると、55〜65歳のブリッジ資金にどう充当するかの設計がしやすくなりました。 - 教育費や住宅費の終わり方が読めること
わが家は「教育費の山が55〜58歳の4年に集中」と判明。年ごとに“のせる”だけで、ブリッジのピークと対策が先に決まります。
さらに、私はFIRE=完全引退とは考えていません。ゴールは“働かなくてもいいけれど、働いてもいい”という選択の自由。具体的には、
働き方のゴールは“選べる自由”
- サイドFIRE(いまの私のスタンス)
副業・小さな事業の収益も“あらかじめ試算”して、人生の選択肢を広げる発想です。
私は「不足を埋めるためにイヤイヤ働く」のではなく、やりたい領域で得る収益が将来設計を軽くすると捉えています。
たとえば、4%目安(=取り崩し利回り)での必要元本の圧縮効果はこんなイメージです。
※ここで使う「4%目安」は、FIREでよく使われる“取り崩しの上限”の物差しで、「運用しながら取り崩すなら、元本の約4%/年に抑えると資産が長持ちしやすい」という経験則(通称4%ルール)です。厳密な保証ではありませんが、必要元本を逆算するときの計算尺として便利なので、本記事でもこの目安を使います。
- 月5万円(年60万円)の継続収入 → 必要元本は 約1,500万円軽くなる(60万円 ÷ 0.04)
- 月10万円(年120万円)の継続収入 → 必要元本は 約3,000万円軽くなる(120万円 ÷ 0.04)
このレンジ(月5〜10万円)は、今の私の副業収入から考えても、準備すれば現実的に狙えるラインだと感じています。だからこそ、FIREの数字は投資だけで背負い込まず、副収入も前提に“軽く”しておきます。

50代FIREの基礎知識|FIRE・サイドFIRE・4%ルールの押さえどころ
まず、この記事で扱う「50代FIRE」の前提を簡単に整理します。
FIREとは?従来の「早期リタイア」との違い
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の略で、資産運用の収益をベースに生活の自由度を高めるライフプランです。
従来の「早期リタイア」は、ビジネスの成功や相続などで“二度と働かなくても良いレベルの資産”を築いて、あとは資産を取り崩して生きていくイメージでした。
FIREは、そこまでの巨額資産は前提にせず、
- 資産運用からの収益
- 必要に応じた勤労収入
を組み合わせていくことで、「生きるために働かされる状態」から卒業するイメージに近いです。
50代FIREで現実的なのは「サイドFIRE」「スローFIRE」
大和アセットマネジメントや各種マネー記事でも紹介されているように、資産運用だけで完全リタイアする“フルFIRE”より、勤労収入を組み合わせる“サイドFIRE”が現実解とされています。
- サイドFIRE:
資産運用+副業・パート・小さな事業の収入で生活する - スローFIRE:
フルタイムをやめて、勤務時間や働き方を緩めながら段階的にリタイアしていく
50代からFIREを目指す場合、寿命・健康・キャリアの残り時間を考えると、「完全に労働ゼロ」より、好きな仕事・小さな仕事を組み込んだFIREの方がリスクも心理的負担も小さいと感じています。
私自身も、副業・小さな事業の収益をあらかじめ前提に入れたサイドFIREをベースに設計しています。
4%ルールとは?50代FIREでどう使うか
FIREの世界でよく使われるのが「4%ルール」です。ざっくり言うと、
「運用しながらお金を取り崩すなら、元本の4%/年までにしておくと資産が長持ちしやすい」
という経験則で、年間支出額の25倍(=1 ÷ 0.04)がざっくりとした必要資産の目安とされています。
- 年間支出300万円 → 必要資産 約7,500万円
- 年間支出480万円 → 必要資産 約1億2,000万円
ただし、これは主に「米国株を長期保有した場合」を前提にしたルールであり、日本のインフレ・税金・リスク許容度を踏まえると“あくまで計算の物差し”として使うのが現実的です。
本記事でも、必要元本を逆算するときの“計算尺”として4%ルールを使います。
50代からFIREを目指す人が整理すべき支出とリスク
専門家の解説を見ていても、50代FIREの最大の強みは「年金と退職金の見通しが立つこと」だと言われています。
一方で、50代特有のリスクもあります。この章では、50代からFIREを考える前に整理しておきたいポイントをまとめます。
老後の生活費|まずは「自分の基準」を知る
総務省の家計調査では、65歳以上の無職夫婦世帯の平均支出は月約26万円(年約312万円)というデータがあります。
これは1つの目安ですが、実際には
- 外食・旅行をどの程度楽しみたいか
- 趣味にどのくらい使いたいか
- 車を持ち続けるか
などによって、必要額は大きく変わります。
私の場合は、「二拠点生活」「世界一周」などを入れた上で、年間ベース約508万円を“暮らしの型”として置いています(詳細は次章)。
住宅ローン・教育費|50代FIREの最大の“固定砲台”
50代のFIREで特にネックになるのが、
- 住宅ローンが残っているか
- 子どもの教育費のピークがいつ来るか
の2点です。
わが家の場合、
- 教育費のピークは55〜58歳に集中
- 住宅はすでにローン完済
という前提なので、教育Δ(デルタ)を年ごとに“上乗せ”してブリッジ期間を設計しています。ローンが残っている家庭であれば、
- 退職金での繰り上げ返済
- FIRE時期そのものの前倒し・後ろ倒し
などを含めて、「働きながら払う」期間と「リタイア後」の線引きを意識的に決める必要がありそうです。
医療費・介護費・親の介護|“50代以降に増える支出”
50代からFIREを考えるときに、見落としがちなのが医療費・介護費・親の介護コストです。
- 自分自身の病気・入院
- 配偶者の健康リスク
- 親の介護(施設入居費用など)
などは、タイミングも金額も読みにくい支出です。
そのため、FIRE記事でもよく言われている通り、「生活防衛資金」を別枠で確保しておくことが重要です。私は
生活費の12〜24か月分を“投資とは別財布”で保有
する方針にしています(詳細は投資方針の章で触れます)。
再就職リスク・「働きがい」の喪失リスク
50代で一度フルタイムを離れると、再就職が難しくなるリスクも指摘されています。
個人的に大きいと思うのは、
- 「もう一度、フルタイムで働きたくなったとき」に戻りづらい
- 社会との接点が急に減り、働きがい・自己肯定感が落ちる
といった、お金以外のリスクです。
その意味でも、完全リタイアではなくサイドFIRE/スローFIRE前提で設計しておく方が、50代FIREとの相性は良いと感じています。
50代FIREはいくら必要? | 夢の二拠点・世界一周を含む実例シミュレーションを公開

ここからは、私自身の「家族5人」「夢である二拠点生活・世界一周」を前提にしたシミュレーションをベースに、50代FIREに必要な金額を整理していきます。
家族構成:
私と妻、子どもは大学4年・高校1年・中学2年の3人
会社員を引退した後の暮らし方(夢):
- 夏(3〜11月):海沿いの街でサーフィン中心の生活
- 冬(12〜2月):スノーリゾート近くでスノーボード三昧
- まずは賃貸の“二拠点”で頻度と使い勝手を検証し、教育費の山が終わる58歳以降に必要なら片方の所有を検討
夫婦の夢:
引退後に夫婦で世界一周(6か月)
投資と働き方:
- NISAを軸にした長期・分散投資+低レバFXで通貨分散
- 徹底分析で“確信”できる銘柄のみ集中投資、損切りはルール化
- 収入面はサイドFIRE(副業・小さな事業)で「働き方の選択肢」を広げる
二拠点・趣味・世界一周の費用イメージ
- 二拠点賃貸(年額)
- 宮崎 1LDK:9か月=約54万円
- 八幡平 1LDK:3か月=約20.1万円
- 趣味費(サーフィン・スノーボードなど)年50万円想定
- 世界一周費用:夫婦6か月で**+1,400万円**(55歳の1年だけに計上)
この章で使う「型」と数字
- 年間ベース:508万円
- 基礎生活費300万円
- 二拠点賃貸(宮崎54+八幡平20.1)
- 趣味50万円
- 家族旅行60万円
- 家族外食24万円
- 教育Δ(デルタ)
- 55歳+290/56歳+240/57歳+240/58歳+120/59〜65歳+0(合計+890)
- 特別年コスト
- 55歳=世界一周 +1,400万円
- 退職金の手取り(概算)
- 約1,978万円(ブリッジ10年合計から差し引いて使う)
- ブリッジ期間
- 55〜65歳の“年金受給前10年”
55〜65歳の年次シミュレーション(ブリッジ資金)
| 年齢 | 年間ベース | 教育Δ | 特別年 | 必要額(年) | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 55 | 508 | 290 | 1,400 | 2,198 | 世界一周の年 |
| 56 | 508 | 240 | 0 | 748 | 教育費ピーク継続 |
| 57 | 508 | 240 | 0 | 748 | 同上 |
| 58 | 508 | 120 | 0 | 628 | 教育費の山を越える |
| 59 | 508 | 0 | 0 | 508 | 平常年 |
| 60 | 508 | 0 | 0 | 508 | 平常年 |
| 61 | 508 | 0 | 0 | 508 | 平常年 |
| 62 | 508 | 0 | 0 | 508 | 平常年 |
| 63 | 508 | 0 | 0 | 508 | 平常年 |
| 64 | 508 | 0 | 0 | 508 | 平常年 |
| 合計(55–64) | 7,878 | 10年合計 | |||
| − 退職金手取り | −1,978 | 合計から控除 | |||
| = ブリッジ資金 | 5,900 | 55→65歳に必要 |
各年の「必要額(年)」=
年間ベース508 + 教育Δ(その年)+ 特別年(その年)
10年分合計:7,878万円
そこから退職金の手取り1,978万円を差し引き、
→ ブリッジ資金:5,900万円
65歳以降(Aプラン=二拠点を継続)の必要元本
- 年金の置き値:年279万円
- 年間不足:508 − 279 ≒ 229万円
- 4%ルールでの必要元本:
→ 229万円 × 25=約5,725万円
暫定の合計必要額
- ブリッジ資金:5,900万円
- 必要元本:5,725万円
- 防衛資金:600万円(生活費12〜24か月分)
合計すると、約1億2,225万円が、
「家族5人・世界一周・二拠点生活」を前提にした“かなり盛った”50代FIRE必要額という位置づけになります。
ここから先は、副業収入でどこまで圧縮できるかという話になります。
サイド収入で“軽くする”(私のスタンス)
FIREの数字は投資だけで背負い込まず、副業・小さな事業の継続収入も最初から計画に入れます。
4%目安(取り崩し上限の物差し)で見た必要元本の圧縮効果は——
・月5万円(年60万円) → 必要元本 −1,500万円(=60万÷0.04)
・月10万円(年120万円) → 必要元本 −3,000万円(=120万÷0.04)
今の副業の手応えからも、月5〜10万円は準備すれば狙えるレンジだと感じています。だから、“投資+副収入”の両輪で必要額を軽くしておきます。
補足(迷いやすいポイント)
・退職金はどこに反映? 年ごとに分割せず、ブリッジ合計から一括で差し引くほうが設計がシンプル。
・世界一周の扱い:“特別年”としてその年だけに計上。恒常費に混ぜると数字が歪む。
・二拠点はまず賃貸:固定費を軽く保ち、使い方・頻度を実測してから所有を検討。
—
この章の数字はあくまで私の前提です。読者の方は、ここで使った“型”(年間ベース/教育Δ/特別年/退職金/ブリッジ→必要元本)に自分の数字を入れ替えるだけで、同じように「自分の必要額」が出せます。次章では、そのための年金・退職金の見込み額の取り方(実務編)に進みます。
年金・退職金の見込み額の取り方(50代FIREの“最大の武器”)
ここは“手順書”として、私が実際にやった(やる)流れをそのまま置きます。
ゴールは、年金=年◯◯万円/退職金(手取り)=◯◯万円という「使える数字」を確定させ、前章の式に流し込むことです。
1) 年金の見込み額を取る(ねんきんネット)
- 準備
- 基礎年金番号(年金手帳・ねんきん定期便に記載)
- メールアドレス、本人確認(マイナポータル経由でも可)
- ねんきんネットに登録→ログイン
- メニューの「将来の年金額を試算」へ。
- いまの収入や今後の働き方(何歳で退職するか)を入れてシナリオ試算。
- 繰上げ/繰下げも同時に確認
- 65歳を基準に、繰上げ(60〜64歳)や繰下げ(66〜75歳)の試算を出力。
- 私は65歳開始の置き値をベースに、繰下げ(70歳、75歳)の数字も保存しておきます。
- 配偶者の年金も“世帯”で把握
- 夫婦合計の年額を1つの数字に。
- 加給年金・振替加算が絡むケースは発生条件だけメモ(当てはまれば後で加算)。
ここまでで「年金(夫婦合計)=年◯◯万円」を確定。前章の「年間ベース−年金」で65歳以降の不足額を出せます。
2) 退職金の見込み額を取る(制度→見込→受け取り方法)
- 社内の制度を確認
- 就業規則/退職金規程を人事から入手。
- 算定式(最終基本給×支給係数 など)と勤続年数のカウント方法を把握。
- 企業型DC(確定拠出年金)、企業年金(DB/基金)、社外積立があれば別紙で全体像を確認。
- 概算の“額面”を試算
- 退職予定年齢・勤続年数・最終年収レンジを入れて見込額(額面)を作る。
- 企業型DCや社外積立は時価で集計。
- 受け取り方法を比較(税が変わる)
- 一時金:退職所得控除が使える(後述)。
- 年金形式:公的年金等控除が使える。
- 片方だけでなく、一部一時金+残り年金の併用案も検討。
- iDeCo・企業型DCの受け取り時期が退職金と同じ年に重なると控除の使い方が難しくなることがあるので、受給年の分散も視野に。
- 「いつ・どれを・どう受けるか」をメモ
- 例)退職一時金は受給年Aで一括、DCは年B以降に年金形式…のように設計。
3) 退職金の税の概算(“手取り”へ落とす)
まず用語の超・要点
- 退職所得控除=(20年以下)40万円×勤続年数、(20年超部分)70万円×(勤続年数−20年)。※最低80万円
- 退職所得=(退職金額面 − 退職所得控除)× 1/2(※原則:勤続5年超。5年以下は1/2なし等の例外あり)
- この退職所得に、所得税の分離課税の税率(+復興特別所得税)、住民税(退職所得分)がかかり、源泉徴収で原則完結。
- 会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておく(これを出さないと控除が反映されず、源泉過大になりがち)。
カンタン計算の流れ(私のワークシート)
- 勤続年数から退職所得控除を算出
- 額面 − 控除の差額を出す
- 勤続5年超なら×1/2で退職所得
- 税率早見(累進)で所得税+復興税を概算、住民税も加算
- 手取り=額面 −(所得税+復興税+住民税)
- 「手取り」だけを、前章のブリッジ合計から差し引く数字として採用
注意:同一年内に複数の退職金・退職一時金(企業年金の一時金、DC一時金、iDeCo一時金など)を受ける場合、退職所得控除の通算や一体課税の扱いに注意。受給年をズラすと控除を有効に使いやすいケースがあります。
4) 数字の“棚卸しチェックリスト”
- 年金(夫婦合計年額)をねんきんネットで出した
- 65歳開始の置き値のほか、繰下げ(70/75)の見込み額も保存した
- 退職金制度(算定式・勤続年数の取り扱い)を確認した
- 退職金見込(額面)を計算した(DC・企業年金等を含む)
- 受け取り方法(一時金/年金/併用)を案として作った
- 退職所得控除の勤続年数を確認した(入社〜退職までの通算)
- 税の概算を済ませ、手取りを出した
- 申告書(退職所得の受給に関する申告書)を提出メモに入れた
- iDeCo/企業型DCの受給年が退職金と重ならないか確認した
- (あれば)配偶者の退職金・年金も“世帯”で取り込んだ
5) 私の計画への当て込み方(例)
- 年金(置き値):夫婦合計 年279万円 → 前章の「年間ベース−年金」に採用
- 退職金(手取り概算):1,978万円 → ブリッジ10年合計(7,878万)から一括控除
- そのうえで、サイドFIREの月5〜10万円の継続収入も最初から入れる(必要元本を軽くするレバー)
6) つまずきやすいポイント(先に答え)
- 「年金は最新の収入反映が不正確では?」
→ その通り。まずは置き値で設計→毎年1回アップデートが現実的です。 - 「退職金、一時金と年金どっちが得?」
→ 税の控除の効き方が違います。シミュレーションで“手取り”ベースで比較を。iDeCo/DCの受け取り年も含めて通算に注意。 - 「控除は2人分?」
→ 年金は夫婦それぞれで発生。退職金も人ごとの制度・控除です。設計は世帯合算で。
この“実務編”の数字(年金の年額/退職金の手取り)まで取れれば、前章の式にそのまま差し込めます。
次は、投資方針とルール(NISAの長期・分散/低レバFXによる通貨分散/“確信集中”+損切りの設計)に進み、増やす・守るの両輪を具体化していきます。
50代からのFIREを支える投資方針と運用ルール
私の基本は、NISAを土台に“長期・分散”で増やしながら、徹底分析で確信が持てた銘柄だけをピンポイントに攻める設計です。外貨は低レバFXで購買力を確保し、副収入は現実的なレンジで前提に置きます。
新NISAとインデックス投資でつくる「50代FIREのコア資産」
- 新NISAのつみたて枠で、全世界/先進国インデックスを毎月自動積立。
- 成長投資枠は「高配当ETF・REIT」を中心にインカム源を作る(配当・分配は基本再投資)。
50代からの“確信集中投資”ルール(個別株の攻め方)
- 同時投資は基本「1銘柄のみ」。
- 同時保有は1〜5銘柄程度(例外あり):既存の確信銘柄は最大5まで許容。入替基準(前提崩れ・KPI未達・ガイダンス変更など)を明文化。
- 1銘柄ずつ徹底分析し、「なぜ上がるのか(KPI/事業ドライバー/近未来のカタリスト)」を自分の言葉で説明できたときだけエントリー。
- 逆指値で損切りを事前設定。1トレードの許容損失は総資産の0.5〜1%、個別の上限エクスポージャーは15%(最大でも20%)。
投資方針の分散投資は通貨でも(低レバレッジFXの位置づけ)
- 目的は投機ではなく外貨購買力の確保。実効レバレッジは1.1〜1.5倍を上限目安。
- 通貨配分の目安:米ドル(USD)/ユーロ(EUR)/オーストラリアドル(AUD)合計で外貨枠の70〜85%。
トルコリラ(TRY)/ブラジルレアル(BRL)/インドルピー(INR)など新興通貨は合計10%以内、単一2〜3%まで。 - 建玉は分割で構築。旅行や外貨支出の前は事前に現地通貨を用意。スワップ目当てで無理はしない。

生活防衛資金とキャッシュポジションの管理
- 生活防衛資金(12〜24か月分)は投資と別財布で確保。
- ポートフォリオの現金は平時10〜15%、荒れ相場で20%以上へ可変。
- 年1回(必要に応じて半期)でリバランス。コア配分のズレは±5ptを調整目安に。

副業・小さな事業収入をどうFIRE計画に組み込むか
- 50代からの副業・小さな事業はやり方次第で月100万円以上もあり得る想定ですが、実現可能性を重視して「月5〜10万円」を試算に採用しています。
- 50代FIREを想定して配当・分配は基本再投資。55〜65歳のブリッジが重い年だけ一部活用して取り崩し圧力を和らげる。

50代FIREはいくら必要?3,000万円/5,000万円/6,000万円/1億円の到達別に比較
この章のねらい
55歳時点の投資残高が3,000万円/5,000万円/6,000万円/1億円だった場合に、
60・65・70・75・80歳で残高がどう推移するかを、同一前提でざっくり比較します。
数字の地図を先に持っておくと、世界一周や二拠点の入れ方、サイドFIRE(副業・小さな事業)の積み増しを落ち着いて決められます。

試算の前提条件|年4%運用・年金/退職金・生活費とイベント費の内訳
- 運用利回り:年4%(年1回複利)
- 収入
- 55〜64歳:副業 120万円/年
- 65歳以降:副業 60万円/年 + 年金 280万円/年
- 支出(毎年)
- 基礎生活費:380万円/年
- 趣味費(残高帯で可変):
3,000万円=30万円/年/5,000万円=40万円/年/6,000万円=50万円/年/1億円=80万円/年 - 二拠点賃貸:56歳以降 74万円/年(夏:宮崎、冬:八幡平の合算想定)
- 教育費Δ:55歳 +290万円/56歳 +240万円/57歳 +240万円/58歳 +120万円
- 世界一周:60歳に実施
3,000万円=400万円/5,000万円=600万円/6,000万円=700万円/1億円=1,200万円
- 退職金:55歳に手取り想定 1,978万円を投資口座へ一括入金
※55歳の「投資残高」は退職金入金前の目標額(=3,000万円/5,000万円/6,000万円/1億円) - 更新式:毎年「前年末残高×1.04 + 年間収入 − 年間支出」
- 金額は万円表記(=“万円”は円を含みます)。本文では必要に応じ円まで明記します(例:1億円、6,000万円)。
【試算結果】55歳時点の資産別に見る「60・65・70・75・80歳の残高」
| 55歳の投資残高 | 60歳 | 65歳 | 70歳 | 75歳 | 80歳 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 2,445万円 | 1,223万円 | 708万円 | 81万円 | -681万円 |
| 5,000万円 | 4,709万円 | 3,924万円 | 3,940万円 | 3,959万円 | 3,983万円 |
| 6,000万円 | 5,808万円 | 5,207万円 | 5,446万円 | 5,738万円 | 6,093万円 |
| 1億円 | 1億170万円 | 1億351万円 | 1億1,543万円 | 1億2,993万円 | 1億4,758万円 |
ひと目で分かるポイント
- 1億円:世界一周1,200万円+二拠点74万円/年+趣味80万円/年でも65歳以降は増勢。選択肢の幅が最も広い。
- 6,000万円:ブリッジ期(55〜64歳)はややタイトでも、65歳以降は横ばい〜微増。年ごとに“間引く年”を作れば余裕。
- 5,000万円:世界一周600万円を入れても65歳以降はじわり増加。堅実運用+サイドFIREで十分回る。
- 3,000万円:この固定前提のままだと80歳でマイナス。ただし退職の後ろ倒し/世界一周の圧縮・後ろ倒し/二拠点や趣味費の年次スイッチング/副業を月10万円へ積み増しのセットで黒字化は現実的。
資産1億円・6,000万円・5,000万円・3,000万円|50代FIREの戦い方
1億円:やりたいこと前提で設計→“減らない”が基本線
- 世界一周1,200万円、趣味80万円/年、二拠点74万円/年でも65歳以降は増える設計。
- 配当・分配は原則再投資、イベント年のみ一部活用。心理的余裕が大きい帯。
6,000万円:イベント密度を調整すれば“増える帯”に乗る
- 世界一周700万円でも65歳以降は横ばい〜微増。
- 二拠点は隔年活用、趣味費は好況年だけ増やすなど、年次スイッチングで十分コントロール可能。
5,000万円:二拠点の“間引き”+副業月5→10万円で盤石
- 世界一周600万円込みでも増勢へ。
- **副業を月10万円(=年120万円)**に上げられる年を作ると安全域がさらに広がります。
3,000万円:やり方次第で達成可能(設計を“攻守”で)
- 退職を58歳前後へ後ろ倒しして教育費Δの重い年を給与で吸収。
- 世界一周は400万円に圧縮(期間短縮・クラス見直し)or 後ろ倒し。
- 二拠点・趣味費は必要年のみON。副業は月10万円の体制へ。
- これらの調整でプラス圏の維持は十分に可能です。
世界一周・二拠点・趣味費は“使う年/控える年”で調整
- 固定費(基礎生活費)は動かしづらい分、可変費(趣味/二拠点/旅行)を“使う年/控える年”で切り替えると効きます。
- 世界一周は「行く時期/期間/クラス」の3点で予算コントロール。
- 二拠点はまず賃貸で検証 → 片側のみ所有の順に段階導入。使わない年はゼロにできる設計が安全。
副業月5万・10万が50代FIREに与えるインパクト
- 月5万円=年60万円、月10万円=年120万円。
- 年4%運用でも年60万円の差は将来残高にダイレクトに効きます。
- いまの副業実績なら、月5→10万円は現実的な射程。55〜57歳のうちに仕組み化しておくのが◎。
50代FIREまとめ:55歳“到達額”はゴールではなく、配分設計の起点
- 1億円なら余裕、6,000万円/5,000万円は十分戦える、3,000万円は設計しだいで十分可能――これが本前提での結論です。
- カギは ①年4%で増やす、②可変費を年次で動かす、③副業収入を定常イン化 の3点。
- あとは“やりたい順”に予算をのせるだけ。数字が見えると、迷いは減ります。
「金融資産1億円あればFIREできる?」50代FIREと1億円神話のリアル
「50代 FIRE」で検索すると、
「金融資産1億円あればFIRE可能」
といった見出しの記事をよく見かけます。
1億円という数字はインパクトがあり、
- キリがよくて目標にしやすい
- 老後2,000万円問題の“上位互換”的に聞こえる
という意味でも、キャッチコピーとしてとても使いやすい金額です。
ただ、FIREを具体的に設計していくと、「1億円あれば絶対安心」「1億円ないと無理」という話ではまったくないと感じます。
なぜ「1億円」が目安としてよく語られるのか
FIRE界隈でよく使われる4%ルールをあてはめると、
- 年間支出400万円 → 必要資産 約1億円(=400万 ÷ 0.04)
となります。
日本人の感覚からすると、
- 「夫婦で年300〜400万円くらいの生活費」
- 「少しゆとりを見ても、年400万円くらいあれば…」
と考える人が多いので、「じゃあ1億円あればFIREできるよね」というロジックに乗りやすいのだと思います。
しかし、4%ルールはあくまで“ざっくり計算するための物差し”であって、
- インフレ率
- 税金
- 為替・投資商品の値動き
- その人のリスク許容度
などを一切考慮していません。
「1億円さえあれば、あとは何も考えなくていい」という意味ではない、という点は押さえておきたいところです。
1億円を“全部投資に回す”前提は現実的ではない
もう1つ大事なのは、1億円すべてをリスク資産にフルインベストする人はほとんどいないということです。
現実のFIRE生活を考えると、
- 生活費数か月〜1年分の現金
- 突発的な医療費・介護費・修繕費
- 家族のイベント(子どもの結婚、親の介護など)
に備えるため、「いつでも取り崩せるお金」を別枠で持っておく必要があります。
つまり、仮に金融資産1億円あったとしても、
- 生活防衛資金として現金を数千万円
- 残りを株式・投資信託・債券などで運用
といったイメージになり、 “1億円全額が4%で回る”前提はそもそも非現実的です。
私自身も「投資資産で1億円」は長期目標にしていますが、
- 1億円を全部リスク資産に突っ込む
- 現金クッションゼロでFIREに突入する
という前提はまったく置いていません。
1億円なくても50代FIREは可能|見るべきは“金額”より“設計”
この記事のシミュレーションでは、
- 1億円帯:世界一周+二拠点+趣味フルセットでも“減りにくい”
- 6,000万円帯:イベントの入れ方しだいで“増える帯”に乗せられる
- 5,000万円帯:二拠点を間引き、副業月10万円を組み合わせればかなり盤石
- 3,000万円帯:
- 退職時期の前後
- 世界一周の予算・タイミング
- 副業収入の設計
を調整することで黒字化は十分可能
というイメージになりました。
ここから分かるのは、
「1億円あるかどうか」がFIREの合否を決めるわけではない
ということです。
むしろ、
- 自分と家族がどんな暮らし方をしたいか
- どのイベントを優先し、どこは削れるのか
- 年金・退職金・副業収入をどう組み合わせるか
といった“お金の配置とタイミングの設計”こそが、50代FIREの本丸だと感じています。
私なりの結論:1億円は「上限目標」、設計の主役は“キャッシュフロー”
個人的には、
- 投資資産1億円は「夢としての上限目標」
- 実務としては、
- ブリッジ期間(55〜65歳)の必要額
- 65歳以降の不足額
- 副業・サイドFIREの収入
を踏まえたキャッシュフロー設計のほうが重要
だと思っています。
言い換えると、
「1億円を目指す」よりも、
「自分の50代FIREに必要な数字を、自分の暮らし方から逆算する」
ことが、50代からFIREを目指すうえでのリアルな第一歩だと考えています。
まとめ|55歳“到達額”はゴールではなく、配分設計のスタートライン
最後に、この記事全体のまとめを「50代FIRE」という観点から整理しておきます。
- 50代はFIREに“遅い世代”ではなく、設計精度を上げやすい世代
- 年金・退職金・教育費・住宅費の見通しが立つ
- 50代FIREの現実解は「サイドFIRE/スローFIRE」
- 完全リタイアより、「働かなくてもいいけれど、働いてもいい」状態を目指す
- 4%ルールは“計算尺”として使う
- 年間支出の25倍を目安にしつつ、日本の税金・インフレ・リスクを踏まえて“安全側”で見る
- 55歳時点の資産は、ゴールではなく「配分を決める起点」
- 1億円なら余裕、6,000万円/5,000万円は十分戦える、3,000万円も設計しだいで可能
- イベントと可変費は“使う年/控える年”でスイッチング
- 世界一周、二拠点、趣味費はON/OFFでコントロール
- 副業・小さな事業は50代FIREと相性が良い
- 月5〜10万円の継続収入でも、必要元本は1,500〜3,000万円軽くなる
そして何より、
「いくらあればFIREできるか?」ではなく、
「どんな50代〜70代を過ごしたいか」を言葉と数字で描くこと
が、50代からFIREを考えるうえでのスタートラインだと感じています。


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