アルファベット株を買った理由|AI軍事利用時代の投資判断

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なぜ今アルファベット株を買ったのか?|AI時代の投資に込めた想い

AIが人類の暮らしを根底から変えていく——これはもう確信に近いものがあります。働き方、医療、教育、移動手段。この先10年で、AIは私たちの生活のあらゆる場面に入り込むでしょう。その変化の大きさは、インターネットの登場に匹敵するか、それ以上だと思っています。

しかし、だからこそ怖いのです。AIが軍事目的に使われること——人を監視し、人を殺す判断を機械に委ねること——には、私は賛成できません。

今、AIの世界では歴史的な事件が起きています。AIチャットボット「Claude(クロード)」を開発するAnthropic(アンソロピック)という企業が、米国防総省(ペンタゴン)との2億ドルの契約を事実上拒否しました。AIの軍事利用を無制限に認めることを拒んだのです。一方で、ChatGPTのOpenAI(オープンAI)はペンタゴンと契約を結び、250万人以上の消費者による不買運動が起きています。

AIの進化は止まらない。でも、その力がどう使われるかは、人間が決める。この記事は、その激動の中で「なぜ私がアルファベット株を選んだのか」を、5つの理由と自分なりの未来像を交えて書いたものです。財務分析の詳細は前回の記事で20の観点から検証していますので、今回は「想い」と「構造」の話を中心にします。

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世界一周や海外移住など、人生の夢を実現するために「投資資産1億円」を目指しています。 「長期」「積立」「確信を得るまで分析する」投資を信条に、 ファイナンシャルプランナーの学習を通じて資産形成の本質を探り続けています。

2026年のAI軍事利用——何が起きているのか

アメリカの軍事行動とAIの関わり

この記事を書いている2026年3月、世界は激しく動いています。

2026年1月3日、アメリカはベネズエラに軍事侵攻し、マドゥロ大統領を拘束しました。2月28日には、米軍とイスラエル軍が「Operation Epic Fury(エピックフューリー作戦)」を発動し、イランに対して24時間で1,500以上の攻撃を実施。中東にあるAmazonのクラウドデータセンターがドローン攻撃で損傷を受けるという、「AIを支えるインフラ自体が攻撃される」事態も発生しました。

これらの軍事作戦の背後には、AIが深く関わっています。標的の選定、作戦計画の立案、サイバー攻撃支援——AIはもはや「画面の中のツール」ではなく、「戦争に使われる技術」に変わりつつあります。

中国のAI軍拡——国際ルールの不在

一方の中国も加速しています。Foreign Affairs誌(2026年3月)によれば、中国の人民解放軍はAIを自律型ドローン群やミサイル防衛に急速に統合しています。

2026年2月にスペインで開催されたREAIM(ライム)——「軍事におけるAIの責任ある利用」を議論する国際サミットでは、20項目の共同宣言が準備されましたが、米中ともに署名を拒否しました。AIの軍事利用に関する国際ルールは、事実上つくれない状態になっています。

CFR(外交問題評議会)——アメリカの有力な外交シンクタンクは、「AIの軍事導入速度は、国際協調の速度をはるかに上回っている」と分析しています。

倫理だけでは守れない、でもアメリカも怖い

私はAIの軍事利用に強い懸念を持っています。

しかし同時に、「倫理だけを唱えていても、倫理のない相手に蹂躙される」という恐怖もあります。中国が止まらない以上、民主主義国側が完全に手を引くわけにはいかないという理屈は、感情的には受け入れがたいけれど理解はできます。

ただ、ベネズエラ侵攻やイラン攻撃を見ると、「AIを正しく使う側に預ければ安全」という前提自体が揺らいでいます。英国の王立国際問題研究所(チャタムハウス)はベネズエラ攻撃に「正当化の根拠はない」と明言し、アルジャジーラは「国際法の崩壊」と論じました。

「善い国」が使えば安全だ、という物語はもう成り立たない。この矛盾を抱えたまま、私はAI関連の投資判断を迫られていました。

アンソロピックの契約拒否——2億ドルを捨てた企業の決断

ペンタゴンが求めたこと、アンソロピックが守ったもの

Anthropic(アンソロピック)は、AIの安全性研究を重視するAI企業です。ChatGPTの対抗馬である「Claude(クロード)」を開発しています。元OpenAIの幹部が「もっと安全なAIをつくりたい」と独立して設立した会社であり、AI業界では「最も慎重な企業」として知られています。

このアンソロピックが2025年半ば、ペンタゴンと約2億ドルの契約を結びました。軍の機密システムでClaudeが使えるようにするものです。ただし、アンソロピックは最初から2つの「レッドライン(越えてはならない線)」を設けていました。

一つ目は、大規模監視への利用禁止。 AIを使ってアメリカ国民を網羅的に監視するシステムには協力しない。

二つ目は、完全自律型の殺傷兵器への利用禁止。 人間の判断を介さずにAIだけで「誰を殺すか」を決めるシステムには協力しない。

ペンタゴン側はこれに反発しました。交渉担当者のエミール・マイケルは「AIはExcel(表計算ソフト)と同じ道具だ。企業のルールではなく法律だけで制約すべきだ」と主張。さらに、Claudeには戦争シミュレーション中に「この質問には答えられません」と回答を拒否する安全制限があり、軍はこれにも不満を持っていました。

報復——政府による締め出し

交渉は決裂。ヘグセス国防長官はアンソロピックを「偽善に包まれた臆病な企業」と批判。サプライチェーンリスク(通常は中国企業など敵対国の企業に適用される指定)に認定すると警告しました。トランプ大統領は「過激な左翼企業」と攻撃し、全連邦機関でのアンソロピック製品の利用停止を命じました。

それでもアンソロピックのCEOダリオ・アモデイは折れませんでした。CBSのインタビューでこう語っています——「私は平和主義者ではない。AI兵器に反対しているのではなく、今のAIシステムはその任務に十分な能力を持っていないと言っているのだ」。

2億ドルの契約を失い、連邦政府から締め出される。普通の企業にはできない決断です。しかしアンソロピックの年間収益は、この紛争の渦中で90億ドルから190億ドルへと倍増しました。Claudeは Apple App StoreとGoogle Play Storeの両方で無料アプリ1位に。1月末にランキング131位だったアプリが、わずか1ヶ月でトップになったのです。

「倫理的な姿勢を取ると市場で罰せられる」——この通説が、覆されつつあります。

ChatGPTの不買運動——250万人が離れた理由

オープンAIがペンタゴンと結んだ契約の中身

アンソロピックが退いた後、最も積極的にペンタゴンのポジションに入ったのがOpenAI(オープンAI)——ChatGPTの開発元です。

2025年6月にDoDと上限2億ドルの試作契約を締結。注目すべきはその内容で、「あらゆる合法的目的」での使用を認めるものでした。つまり、アンソロピックが設けた「大規模監視の禁止」「自律兵器の禁止」というレッドラインが、この契約には含まれていなかったのです。

CEOのサム・アルトマンは社内メモで「アンソロピックのレッドラインを我々も共有する」と述べましたが、その数時間後にレッドラインのないペンタゴン契約を発表。その後の社内全体会議で「間違いだった。急ぎすぎた」と認めています。

しかし、アンソロピックは「間違い」を犯す前に立ち止まりました。この差は大きい。

「QuitGPT(クイットGPT)」——消費者が動いた

2026年初頭、「QuitGPT(クイットGPT)」と名付けられた不買運動が急速に拡大しました。「ChatGPTのサブスクリプション(月額課金)を解約しよう」という呼びかけです。

背景にあるのは3つの不満です。AIの安全性への懸念、ペンタゴンとの軍事契約、そしてオープンAI経営陣のトランプ政権への接近(政治献金を含む)。日本でも「アベンジャーズのハルク役俳優が参加」と報じられるなど、国際的な広がりを見せました。

3月初旬のKTVU(サンフランシスコのテレビ局)の報道では、250万人以上が参加。ChatGPTのアンインストール(削除)数は一週末で295%急増しました。

そして、ChatGPTを離れた人たちの受け皿として推奨されたのが、ClaudeとGoogle Gemini(ジェミニ)です。ここに、私がアルファベット株に注目した一つの理由があります。

アルファベット株を選んだ5つの理由

理由①:アンソロピックに間接投資できる数少ない手段

「アンソロピックに共感するなら、アンソロピック株を買えばいい」——そう思われるかもしれません。しかし、アンソロピックは非上場企業であり、一般の個人投資家は株を買えません。

ここでGoogleの出番です。GoogleはアンソロピックにI30億ドル以上を出資し、約14%の株式を保有する大株主です。さらに2025年10月、数百億ドル規模のクラウド契約を結び、アンソロピックに100万個のTPU(Googleが開発したAI専用の半導体チップ)へのアクセスを提供しています。

アンソロピックのAI計算処理の相当部分がGoogle Cloud上で動いています。つまり、アンソロピックが成長すればするほど、Googleの資産価値とクラウド売上に反映される構造です。

非上場のアンソロピックに個人投資家が間接的に投資する手段として、アルファベットは最も現実的な選択肢です。

理由②:不買運動の受け皿になれるポジション

クイットGPT運動でChatGPTを離れたユーザーの移行先は、ClaudeとGeminiです。Googleはこの両方の恩恵を受けます。

Gemini自体は月間6.5億人以上のユーザーを持ち、成長が加速しています。同時に、アンソロピックへの出資を通じてClaudeの成長からも利益を得る。つまり「オープンAIの倫理的な失敗」が、Googleとアンソロピックの両方に追い風になる構造になっています。

理由③:社内にAIの倫理的な歯止めが存在する

Googleは完璧な企業ではありません。2025年2月、AI原則(社内ルール)から兵器・監視への禁止条項を削除しました。2018年から守ってきた「軍事AIはやらない」という約束を、事実上撤回したのです。これは批判されるべき判断です。

しかし2026年2月26日、100名以上のGoogle DeepMind(グーグルのAI研究部門)の従業員が、ジェフ・ディーン(Google AI研究トップ)宛てに書簡を送りました。「Geminiをアメリカ国民の大規模監視に使わせないでほしい」「自律型兵器にレッドラインを引いてほしい」——アンソロピックと同じ要求です。

さらにオープンAIの従業員も加わり、最終的に約900名のAI技術者が公開書簡に署名しました。ジェフ・ディーン自身も、2018年に自分が署名した「致死的自律兵器に関する誓約」を引用し、「私の立場は変わっていない」と個人として表明しています。

ここが、他のAI企業との決定的な違いです。

経営判断は市場や政治の圧力で変わり得ます。しかし、社内に「ここから先は行くべきではない」と声を上げる文化があるかないかは、長期的な企業価値を左右する無形の資産です。Googleには2017年のBoston Dynamics(軍事用ロボット企業)売却、2018年のProject Maven(米軍のAI画像解析プロジェクト)からの撤退という前例があり、その文化は今も生きている。私はこれを「企業の免疫システム」と呼んでいます。

理由④:米国防AI市場で「両張り」できる構造

AI軍事利用の話に戻ります。米政府のAI調達は、一つの企業がすべてを担うのではなく、「AIモデルの会社」「クラウドの会社」「防衛システムの実装会社」の三層構造になっています。

GoogleはJWCC(統合戦闘クラウド能力)——ペンタゴンがAmazon、Microsoft、Oracle、Googleの4社と結んだクラウド提供枠組み——の主要事業者として、DoDに直接サービスを提供しています。同時に、アンソロピックへの出資とクラウド契約を通じて、Claude経由の間接的な防衛市場参入も確保しています。

仮にアンソロピックが防衛市場に復帰すれば、Googleはその恩恵を受けます。アンソロピックが後退すれば、Google自身がGeminiで穴を埋められます。防衛AI市場がどう動いても、ポジションが残る構造です。

なお2026年3月6日の日経報道によれば、Amazon(AWS)、Microsoft、Googleのクラウド3社は「防衛関連以外でアンソロピックとの協業を継続する」方針を示しており、ペンタゴンの排除命令が民間ビジネスにまで波及しない構えを見せています。

理由⑤:巨額投資ができる財務力が「堀」になる

2025年Q4決算(2026年2月4日発表)で、アルファベットは2026年の設備投資を1,750億〜1,850億ドル(約27〜29兆円)と発表しました。前年のほぼ倍で、市場の予想を大きく超える規模です。AI向けデータセンターやTPU(AI半導体)への投資が中心です。

この発表で株価は1月の約328ドルから3月の約298ドルへ下落しました。「そんなに使って利益は出るのか」という不安です。

しかし長期投資家の視点では、この規模の投資を実行できること自体が競争力です。年間27兆円の設備投資ができる企業は世界にGoogle、Amazon、Microsoft、Metaの4社程度しかありません。AI時代のインフラ競争は「資金力の消耗戦」になっており、この土俵に立てない企業は脱落していきます。

そしてこの投資は「当てずっぽう」ではありません。Google Cloudの受注残(バックログ)は2,400億ドルに達しており、「すでに約束された将来の売上」として可視化されています。投じたお金のリターンが見えている投資です。

自己資本比率約72%、現金約951億ドル(約15兆円)。この財務基盤があるからこそ、巨額投資をしても倒れない。298ドルという株価は、この「投資ができる体力」を過小評価していると私は考えています。

(財務分析の詳細は前回の記事で検証しています)

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AI軍事利用の未来——私が描く3つのシナリオ

最悪のシナリオ:歯止めなき軍拡競争

AIの軍事利用に国際規制がかからず、米中が自律型兵器(人間の判断なしにAIが攻撃を行う兵器)を競って配備する世界です。2026年2月のREAIMでの共同宣言拒否が、この方向を示唆しています。「キラーロボット」が現実のものとなる最悪の未来です。

中間のシナリオ:企業と消費者が歯止めになる

国際条約はまとまらないが、アンソロピックのような企業がレッドラインを設定し、クイットGPTのような消費者運動とGoogle DeepMindの書簡のような従業員の声が、企業の行動を制約する世界です。国家の代わりに市場メカニズムが歯止めになる。私は、今まさにこの方向に動いていると見ています。

最善のシナリオ:技術でAIの安全性を担保できる未来

AI安全性の研究が進み、AIシステム自体に信頼できる判断能力が組み込まれる未来です。アモデイが「今のAIはその任務に十分な能力を持っていない」と述べた問題が、技術的に解決される。アンソロピックが自社のAIの「人間を欺く行動パターン」を継続的に研究し論文を公開しているのは、この方向への地道な努力です。

投資を通じて「中間のシナリオ」を支持する

最善を祈りつつ、現実的に支持できるのは中間のシナリオです。

この循環が機能するためのカギは、「レッドラインを引く企業が経済的に成功すること」です。アンソロピックの収益が3ヶ月で倍増した事実は、「倫理的な姿勢が市場で罰せられる」のではなく「競争優位になりうる」ことを初めて大規模に実証しました。

そしてGoogleは、この循環の中に複数の接点を持っています。アンソロピックの出資者として。Geminiの提供者として。社内に倫理的な声を持つ企業として。不買運動の受け皿として。

投資家として私にできるのは、「歯止めを持つ企業」に資本を配分することです。

おわりに——不完全な世界で、自分なりの答えを出す

「完璧に善い選択肢」はありません。AIの軍事利用を完全に止めることは、一人の個人投資家にはできない。中国の軍拡も、トランプ政権の軍事行動も、私の力では止められない。

でも、「どの企業に自分のお金を預けるか」という選択を通じて、自分の価値観を示すことはできます。

私が選んだのは、社内に「ここから先は行くべきではない」と声を上げる文化がある企業。最も倫理的なAI企業の大株主でもある企業。ChatGPTの不買運動の受け皿になれる企業。そして巨額のAI投資で未来を自ら築ける財務力を持つ企業。


(本記事は個人的な投資判断と見解の記録であり、投資助言ではありません。株式投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。)

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この記事を書いた人

こんにちは、おかだ しょうざぶろうです。
2008年に入社した大手IT企業で、ビジネス開発や新規事業を担当してきました。数年前には子会社に出向し、教育事業の立ち上げを責任者として担当しました。
それ以前は、IT業界専門の人材サービス企業で人材紹介サービスの新規事業立ち上げに携わり、最終的には人材紹介事業の責任者も務めました。
大学4年生、高校1年生、中学2年生の3人の父親でもあります。
「Journey from 50」では、投資・副業・起業・健康・学び・旅・食・子育てなど、50代からの挑戦をプロセスごとにリアルに発信。結果だけでなく挑戦の過程を共有し、読者の皆さんと一緒に「人生に遅すぎることはない」を体現しながら楽しむことを目指しています。
資格をとる気はありませんがファイナンシャルプランナーの学習を開始しました。

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